2007年12月19日

[日常]ポスドク問題についてのエントリが面白かった

5号館のつぶやき - スポーツ選手 引退後の人生
http://shinka3.exblog.jp/7728747/

ものすごく面白かった。エントリ本文というより、特にコメントが。ほぼ全部。

ポスドク問題に深い関心を寄せる人っていうのは、こういうコメントを書ける人たちなんだな、と思って感心した。

一部のコメントを抜粋。

みなさん、本当に亀田とか内藤が
ボクシングで世界一強いと思いますか?
私は違うと思う。
クレバーな人間はプロボクシングなんか選ばない。
せいぜい学生競技レベルで止めておく。

最高の知性がアカデミアに欲しいのなら、
それだけの環境を整えないとダメでしょう。
『大学教授になる方法』の鷲田教授ですら、皮肉まじりに
『新大学教授になる方法』で書いていらっしゃいます。

「賢い人間でないと大学教授になれないと思ったら、
 それは間違っている。
 本当に賢い人間は、学問などという、
 割の合わないことはやらないのである」
どの時代でのどの社会でも、
安全牌派の多数派と、
ハイリスクハイリターン派の少数派が混じって
ちょうど良く機能します。
それは一種の選別機構でもあります。
そこを間違うと
「大学教授のなり方」「芸能人のなり方」といった
価値の怪しい本がさらに流通して、
勘違いで参入して不幸になる人が増える、
とも考えられます。

新規産業を腐らせる最善の手段は、
国の補助金かもしれません。
国や社会から放置された漫画、アニメと言ったものが、
今や日本文化産業の主力ですが、
それが認知された今、
公立大学にそういう講座までできて
公的な金までが降り注ぎ始めました。
今後この中からさらに多数の手塚治や宮崎駿が
登場するでしょうか?

日本の漫画アニメ産業は、
今後衰退に向かうのではないか、
より苛烈な競争環境のどこか新興国に
取って代わられるのではないか、
こう私には思えます。
手塚や宮崎が出現する必要はまったくありません。
なぜなら、彼らは先鞭をつけただけであり、
現在、日本のアニメ、マンガ、ゲーム産業を下支えしているのは、
コミケなどに同人誌を出している連中だからです。
つまり、裾野の問題ですね。
裾野が広ければ広いほど、特殊な才能が出てくる。
同人誌は
ローリスクで自分の才能を試せる場を
提供してくれた。
今はWWWが部分的に
その役割を果たしています。
同人ゲームやイラストは発表し放題です。
「月姫」とか「FATE」ってご存知でしょうか?
今、一番、人気のあるコンテンツですけれども。
あれを作ったのは同人サークルなわけで、
コミケなしには出ませんでした。
普通の社会生活を営みながら、
私生活の部分で自分の才能を試せる場があったから、
才能が出てくるんで、
研究に自分のリソースを全部ぶち込まないと、
モノにならないようなハイリスクな場では、
参加者は限られてしまうでしょう。
アマチュアのお遊びが最前線
という分野があるとすれば、
楽しくて結構な事ですが、
それは正直取るに足らない分野なはずです。

「金と芸術 なぜアーティストは貧乏なのか」
http://d.hatena.ne.jp/asin/4903341003/seizonntekisy-22
って本ご存知ですか。
加えるとすれば、
「創造的職業」で、
このような「参加の多くを不幸にする」システムが安定なのは、
それが芸術(スポーツ、学問etc)にとって
有益だからだと思えます。
大学院重点化のときの
博士過程進学者の多くは、
ノーベル賞受賞者になりたかったのではなく、
教授という称号を持つ
サラリーマンになりたかったのです。
たぶんローリスクで気楽な職業に見えたのでしょう。
欧米の某研究機関のプロパーな職に就いた人と、
数年前に日本の博士問題について話をしました。
彼は日本の地方3流大学の修士課程を出て、
就職しようとしましたが、どこにも就職できず、
半年のブランクを経て
欧米の大学院の博士課程へと進学しました。
その後、彼は3年でPh.D.を取得して、
すぐに有名研究機関の正規ポストをゲットしました。
いま彼は30代半ばで、
いわゆる日本のロスジェネ(Lost Generation)です。
彼が言うには、
「多くの国では博士が不足しているのに、
 博士が余っているなんて信じられない」
ということでした。

このように
人生のどんな時期にでも
(大学院に行って)高度な専門性を身に付ければ、
それを仕事に活かしてステップアップできる
社会的な仕組みを作ることが、
本当に意味での“再チャレンジ”であり、
(人々に夢を持たせ)社会を活性化させること
につながるのだと思います。
一方、日本では
大学入学時にその後の人生がほぼ決まってしまいますが、
これは格差の固定であり、
ある時点で多くの人々に生きる希望を失わせてしまいます。
ここまで欧米の真似をしてきたのですから、
最後に社会的流動性を持たせることが必要でしょう。
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