2005-2006 シーズン、ドイツ 10 部リーグに単身挑戦を敢行したサッカーライターのセルフレポート。この模様はリアルタイムで著者ブログでも発信され、一部で人気を呼んだ。
かくいう僕もその一人。当時は僕もちょうど東京から松江への移住を行い苦しんでいた時期で、強いシンパシーを覚えながら著者のブログを読んでいた。「冬のドイツは天候が悪くて気が滅入る。ここにくらべれば東京の冬は南国のようだ!」と記された箇所などは、まったく他人事に思えなかった。
さてこの本にはそのドイツと日本の差異も多く記されているわけだが、特に興味深かったのが次のような指摘。
言い換えると、ドイツは社会システムが未成熟だから個人が強くならざるを得ないように思えた。逆に日本は社会システムが高度に安定して機能するから、自己主張能力が退化しているということになる。日本のこのような面を指して温室とか甘ちゃんと評する風潮は少なくない。
それはそうなんだが、でもはたしていったいどっちのほうが人間社会として成熟している・高尚であるといえるのか?と僕は自問してしまった。
強引にたとえれば、治安が悪いから自警能力が発達する地域と、そもそも犯罪の心配がないから自警の必要すらない地域と、どっちのほうがいい社会なのか?という比較と同じなんじゃないだろうか。
僕は個人能力の向上をとても大切だと思っているけれど、後者のほうが社会として優れていると思うし、個人能力の向上と同等以上に価値があることだと評価したい。
サッカーを見ていると日本に帰化する選手が散見される。僕にはこの現象が、日本の経済力や社会システムが高く評価されていることの現れに見えるし、それは日本が世界に対してもっと誇っていいことだと思うんだ。