2008年06月14日 [長年日記]

[日常][バンド][音楽]黄金律と白銀律からお手本の話

黄金律と白銀律というものがある。概略はこんな意味。

黄金律 (golden rule)されてうれしいことを、自分も行う
白銀律 (silver rule)されていやなことは、自分もしない

このうち、黄金律についての僕の重要な体験を以下に記す。


僕は大学 2 年の半ばに、所属していた音楽サークルでリーダーに選出された。そのとき僕は、しまった、困った、どうしよう、と困惑した。

実は高校卒業後の僕は、厭世的な思考にすごく浸っていた。だからサークルに入りながらも口数は極端に少なく、あいさつや笑顔もそっけない、とてもとっつきにくい人間だった。

そんな僕がリーダーとして、後輩や仲間にうまく接していけるわけがない、どうしよう、というのが困惑の理由だった。だから辞退も考えた。

しかし、自分が先輩方にしてもらってきたことを考えたときに、辞退という考えは吹き飛んだ。これは僕らの番なのだ、と思った。僕は恩返しをしなければならないのだと思ったのだ。


それまでの 2 年間、なんともいけすかない男だった僕に対して、当時の先輩方はすごくよくしてくれた。バンドにたくさん誘ってくれたり、下宿に泊めてくれたり、あてのないドライブに連れて行ってくれたり。

なによりも、先輩方は僕に、いつもたくさん話しかけてくれた。あんな無愛想な僕だったのに、楽しい話をたくさんしてくれた。当時の僕にも薄々わかってはいたが、それがどんなに嬉しくてありがたかったことか。

もちろんそれは僕だけじゃなくて、僕と同じ代のみんながそうしてもらっていた。

自分がそれだけ恩を受けておきながら、自分自身は何もしないなんていうわけには、いかないじゃないか。


それから僕は、昔の僕に戻った。人当たりがよく、おしゃべりで、親しみやすそうな人になった。サークルの仲間は目を丸くしたと思うし、これまで 2 年間正直スマンかった、と思ったが、これが奏功したのか新入生とはすごい早さで仲良くなることができた。

そしてなにより、僕らにはお手本があった。先輩方が僕らにしてくれたことを、そのまま新入生たちにしてあげればよかったのだ。ただそうするだけで、まるで魔法がかかったかのように、サークル全体がとても楽しい場になっていった。

きっと僕らの代のメンバーはみんな、同じ気持ちを持ちながら新入生に接していったんじゃないかと思っている。先輩にしてもらったことを、後輩たちに返そうと。それが実は先輩たちへの恩返しでもあるのだと。

それからの 2 年間を、僕らはそうやって過ごしていった。リーダーの代としての任期が終わったあとでも、同じようにしていった。なぜなら僕らの先輩たちも、そうしてくれていたから。


そして僕らが卒業を迎えたときのこと。後輩たちが開いてくれたお別れ会の席で僕は元リーダーとして発言の機会をいただき、次のように話した。

僕らが今日までサークルでやってこられたのは
先輩たちが僕らに本当によくしてくれたからです。
だから僕らも
後輩の皆さんに少しでもそれを返そうと、
やってきてみたつもりです。

だからもし皆さんが僕らに対して
なにか感謝のような気持ちを持ってくれたのならば、
僕らのことはもういいですから(笑)、
それを新しい後輩たちに返してもらえたら
僕らはとても嬉しく思います。
みなさんありがとうございました。

これが、嘘でも偽りでも体裁のいい飾りでもない、僕らの本心だった。


最後に、僕が大好きな曲の歌詞をご紹介。以前にもご紹介しました、プリファブ・スプラウトの "one of the broken" です。

sing me no deep hymn of devotion
sing me no slow sweet melody
sing it to one, one of the broken
and brother you're singing,
singing to me

関連エントリ

参考リンク

Matzにっき(2005-06-26) - オープンソースとキリスト教
http://www.rubyist.net/~matz/20050626.html#p02

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